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このコーナーでは、アメリカ西海岸Orange County(OC)にて行われるライブレポートをお届けします。

第30回: SURF CITY BLITZ  - Huntington Beach, CA

 

 パンクフェスSurf City Blitzが開催二日間で4万人を動員。両日SOLD OUT!!

 

南カリフォルニアにあるサーファーのメッカHuntington BeachにてパンクフェスティバルSurf City Blitzが開催。Huntington Beachでは毎年約50万人が訪れるというサーファーのトーナメントU.S. OPENにてビーチ上でコンサートも開催(WeezerやJimmy Eat World等出演)している過去もあり、ビーチ上での野外コンサートはこれまでもあった。しかし、今回のSurf City Blitzでは野外ライブの要素を何倍も引き上げ二日間のフェスティバルとして開催。サーファーのメッカであるビーチ上でのライブというだけでも素晴らしい環境だが、このフェスの一押しな要素は何といっても豪華出演者である。フェス一日目、ヘッドライナーがThe Offspring。その下にPennywise、Suicidal Tendencies、FEAR、TSOL、SNUFF、Mad Caddies、Voodoo Glow Skullsと来るからパンクを知る人達にとってはとんでもないライナップである。二日目はヘッドライナーにSocial Distortion、その下にRancid、Bad Religion、Black Rebel Motorcycle Club、The Interrupters等こちらも強力な出演陣。

 

DAY 1

 

濃い霧に覆われた初日のSurf City Blitz。あいにく会場に隣接しているビーチが全く見えない状態であったが会場は既に多くの人々で賑わっている。野外ステージの横に設置されたMotor Beach Classicの会場ではエントリーバイカー達がレースを行っていた。砂浜のロードは滑りやすく必然的に減速する事になるコーナーカーブでは多くのバイクが混戦となりその間をすり抜ける様に踊り出るバイクに大きな声援が送られていた。マーチブースでは出演アーティスト達のマーチが販売されThe Offspring等はSurf City Blitzの特製ポスターも販売。

 

この日のトップバッターはLAを拠点に活動するロックLost In Atlantis。ヴォーカルElisabethaにトリプルギターを擁する5ピースバンドである。何度かワープドツアーにも出演経験があり、ワープド総帥Kevin Lyman氏一押しステージであるKevin Saysステージにも出演している。活動歴9年になるバンドはロック、ポップロック、ポップパンク、ハードロック要素を絡めたサウンドで初期のParamoreに似ている。Paramore初期2作品が好きな人は是非チェックして貰いたいバンドであり、朝一番の出演の為オーディエンスは疎らだったが勢いのあるパフォーマンスを見せる。

次はトリオパンクSharp Shockが登場。管理人は初めて彼等を見たが非常に興味のあるバンドであった。メンバーそれぞれバンド活動歴が長くヴォーカル兼ギタリストDaveyは元Beat UnionでプレイしLostprophetsの最終ドラムLukeと共にプレイしていた、ベース兼ヴォーカルDanはロックThe Dear&DepartedでプレイしAvenged SevenfoldやAFTと対バン経験がある。バンドはThe Jam, The Clash、この後に続くTSOLのサウンドに近くパンク、ロカビリー、オルタナロックファンも馴染みのある往年のサウンドを現代風にアレンジした感じだ。長い事ヴォーカル経験のある二人がステージ前方で引っ張るタイプのバンドでありAlkaline Trio/Blink-182のMattが経営するHeart Skullsレコード所属。

そしてこの日初となるスカパンクVoodoo Glow Skullsが登場。長年ヴォーカルを担当していたFrankが去年勇退、新ヴォーカルはDeath By Stereoでお馴染みのEfremである。ラテンレスラーが被るマスクを装着しEfremは登場。長年Epitaphに在籍しVictoryにもいたバンドでありPennywiseやThe Offspringが知名度を上げたEpitaph時代の同僚でもある。バンドを知る人知らぬ人全てを飲み込みスカパンクで躍らす、ノリの良いヴォーカルパフォーマンスのEfremも素晴らしい加入であり往年の名曲Shoot The Moonも披露。

この日後半に登場するThe OffspringやPennywiseが影響を受けたTSOLそしてFEARが登場し会場のボルテージは一気に上昇。サイドステージにもこのパンクレジェンドを見ようと人が詰めかけており南カリフォルニアにてBlack Flag等とパンクシーンを作り上げたレジェンドバンドを会場に居る人々が釘付けに。TSOLのフロントマンGregもすっかり白髪になりながらもド派手な赤のデビルジャケットで登場。歳はとったがパフォーマンスは実年齢よりも若くステージを練り歩きながら熱唱。ラスト曲Code Blueではサークルピットも発生。次に登場するFEARはMUSINKでの強烈なライブをそのままにフロントマンLeeはTSOLのGregに負けず劣らずで本当に若々しくパワフルなヴォーカルで圧倒。曲Lets Have A War、往年の名曲I Don't Care About You、ラスト曲More Beerとベテランの存在感を見せつけドラムSpit Stixのパフォーマンスにノックアウト。

夕日に変わるHuntington BeachにてクロスオーバーSuicidal Tendenciesが登場。元SlayerのドラムDave LombardoそしてThe Dillinger Escape PlanのギタリストBen Weinmanを入れたライナップは強力でありメンバー達が登場すると大歓声が、最後にフロントマンMike Muirが登場し「SUICIDAAAAL」と絶叫し曲Suicide's an Alternativeがスタート。手を振り回しステージを行き交うMikeに激しいライブが売りだったThe Dillinger Escape Planから来たBenは相性が抜群。スピードに乗ったクロスオーバーにまるでステージでモッシュをしている様な雰囲気であり。MikeとBenはステージ上で度々ぶつかっていた。曲I Shot The Devil、I Saw Your Mommy等デビュー作セルフタイトルのアルバムから多くの楽曲を披露しハードコアパンク色を出したステージだった。

そしてこの日準ヘッドライナーPennywiseの登場。Huntingtonビーチの北に位置するHermosa Beach出身のバンドは早くからスケートパンクの代名詞的なバンドでありサーファーのメッカのHuntington Beachでもレジェンド的な存在になっている。この頃になるとメインステージエリアには人で溢れかえっており、この頃管理人もこのライブは完売ではないかと思う様になるほどの混み様であり、MUSINKで去年登場した時よりも二倍や三倍は入っていただろう。アルバムFull Circleの曲Fight Till You Dieでスタートしたバンドにオーディエンスも合唱しついていく。最新作Never Gonna Dieからは一曲も無し。このSurf City Blitzをオーディエンスと一緒に楽しむ為か馴染みのある選曲でありSame Old Story、Peaceful Day、Rulesを披露。途中The VandalsのDaveとWarren、そしてAvenged Sevenfold、元Bad ReligionのBrooksがゲスト出演しThe Vandalsのデビュー作から曲Urban StruggleをPennywiseと一緒にプレイ。序盤の「アーアー」の掛け声はPennywiseのJimはやってみたいけど出来ないと辞退しDaveがお手本を見せる様に雄たけびを上げスタート。最後はサイドステージにてバンドを見守る関係者をステージに呼び会場全体でBro Hymnで締める。

 

ヘッドライナーThe Offspringを見ようと人々が前に前に動きだしステージ前は混戦模様の中バンドが登場しTwisted SisterのWe're Not Gonna Take Itをカバーしスタート。会場でWe'reNot Gonna Take It Anymoreと合唱。続いてDexterの「Yeah Yeah Yeah」の掛け声から曲All I Wantをプレイ。モッシュは荒れに荒れてとんでもない事に。Huntington Beachが生んだスーパースターThe Offspringの人気ぶりはやはり凄まじく曲Come Out&Playを開始した時は押されに押されヘロヘロになりながらも周りのオーディエンスと合唱。Noodlesも地元でライブが出来る事を非常に喜んでおり、「会場のあるPacific Coast HighwayとMagnoliaストリートでは何度もサーフィンを楽しんでいる、しかし今日のオーディエンスはこのビーチで見た事無いほどセクシーだ。一日中ビール飲んで葉っぱを吸って楽しんでいるお前らは最高にセクシーな奴らだぜ」と曲Pretty Flyをプレイ。セットリストはシングル曲中心の構成であり残念ながら新曲の披露は無かった。曲Bad Habitの中盤では一旦停止しDexterはこの日まで熱戦を続けていたメジャーリーグDodgersを激励しカウントをとってから会場全体で「Drivers Are Rude...」と合唱。ラスト曲はSelf Esteemで全ての曲で合唱した会場であり、The Offspringを見に来たオーディエンスであった事が証明されたライブでした。The Offspringをまた引っ張りだして聞きたくなる、最高な形でSurf City Blitzは初日を終える。

DAY 2

 

Surf City Blitz二日目、初日とはうって変わり朝から青空が広がる絶好のライブ日和となった。会場の到着すると朝からライブ会場横でバイクのエンジン音が物凄い事に。Motor Beach Classicのレース場の横にはドラッグレースやバイクのパフォーマンスを行うロードが設けており、タイヤから煙を巻き上げたバイカー達が猛スピードで直線ロードを走っている。同会場にはカスタムバイクの展示上が設けておりバイクマニアは熱心に綺麗にカスタマイズされたバイクの写真を撮っていた。また会場にはRockstarエナジードリンクをフリーで提供するブースもあり、朝から温かい気候に恵まれた二日目はRockstarブースは盛況であった。サーファーのメッカであるHuntington Beachならではのカスタムサーフボードのお店や、サーフボードをアートにして展示するコーナーもあり会場とマッチしている出し物には好印象であった。そんな中男女デュオThe Bent Duoのミニライブもあったりとライブ以外でも楽しめる要素は盛りだくさんであった。

 

この日最初に見たライブはシンガーソングライターAaron Lee Tasjan。管理人も初めて見るインディーフォークのアーティストでありNew York DollsそしてLady Gagaとも共演した元Semi Precious Weaponsのギタリストでもある。この日はヘッドライナーにSocial Distortionが居る為にフォークロックアーティストであるAaronの登場にも余り違和感は無い感じである。昨日まで男臭いスケートパンクやスカパンクでそろそろ違ったサウンドを欲しているオーディエンスには最適なフォークロックであり、ブルーグラスやカントリーもミックスされた緩やかなサウンドは昨夜モッシュでもみくちゃにされ疲れた体を癒してくれる。

その後、現在若手スカパンクの代表的な扱いになったThe Interruptersが登場。既にワープドツアーやMUSINKにて彼等のライブをレポートしているがヴォーカルAimeeにBivona三兄弟が楽器を担当するノリノリのスカパンクを聴かせてくれる。Aimeeの歌唱力は非常に力強く、そしてステージでは常に笑顔を絶やさないキュートな振舞いに、三兄弟の息の合ったタイトな演奏そしてライブキーボード奏者でグイグイオーディエンスを惹きつける。LA出身でありこの後に登場するRancidのTimが経営するHellcat所属という事もあり多くのオーディエンスから歓声が起きていた。既に3枚のアルバムを発表しており曲にはTimやRancidが関わっている曲もあったのでもしかしたらゲスト出演もあるかもと思ったが残念ながら共演は無かった。今年発表した最新作からは曲Title HolderやGave You Everythingを披露。ラスト曲Familyをオーディエンスと共に「This Is My Family、My One Crazy Family」を熱唱。

お次にロックBlack Rebel Motorcycle Clubが登場。暫く見ない内にふっかり白髪となりオールバックスタイルとなったフロントマンPeterは渋さが増量。相棒であるベーシストRobertそしてドラムLeahが静かに登場。先に登場したThe Interruptersがイケイケでノリノリな雰囲気だったのが一気に身が引き締まるロックサウンドに。アルバムBaby 81からの曲Took Out A Loanでスタート。テンポの速いTeenage Disease等では結構盛り上がったと思うがオーディエンスは全体的に大人しめ。PeterとRobertのツインヴォーカルは申し分ない出来でありライブは大変すばらしいものでした。しかし、Black Rebel Motorcycle Clubがオーディエンスとマッチしていなかったのか多くのオーディエンスは茫然と立ってみている人が多く、この時ぐらいからビーチボールが観客の中で飛ばしあいが始まる。Social Distortionのヘッドライナーに合わせてこのライナップを組んだが、余りにも渋すぎて観客も「上手いけど、あまり知らない」感が出てしまった。

スケートパンクというジャンルに影響を与えたパンクバンドの一角Bad Religionが登場すると会場は大歓声に。バンドは代表曲Recipe For Hateでスタートし、曲Skyscraper、曲Generatorと間髪入れずに披露。今年自身のSNSでライブパフォーマンスからリタイアした事を発表したギタリストBrett Gurewitzは居ないがJay、Brian、Mike、Gregとお馴染みの顔ぶれに加入から3年経ったドラムJamieの暴れ系のドラミングは非常に安定したライブを見せる。バンドは現在アルバムSufferの30周年を迎えている為ライブ中盤ではSuffer、How Much Is Enough?、Forbidden Beat、Give You Nothing等往年の名曲を披露。オーディエンスにも活気が戻ったのかステージ前にはいくつものモッシュピットが出来ていた。この後にRancidが控えている為前方オーディエンスはパンク野郎がぞろぞろと集まってきておりステージ前は早くも戦場と化していた。

そしてパンク界のカリスマRancidが登場しオーディエンスはもみくちゃ状態に。曲Radioでスタートしたバンドは近年仙人の様に長ーく髭を伸ばしているTimに、永遠のパンク兄貴Larsと、Timの長年の相棒ベーシストMatt、もう既に加入から10年以上経過しているが前任Brettの印象が強すぎるのか未だに新しいドラマーと言われるBrendanが登場。そして先程登場したThe InterruptersからギターKevinがキーボードとして参加。新譜Trouble MakerからはGhost Of A Chance、そしてTelegraph Avenue等を披露。個人的に燃えたのはバンドのBサイド曲であるI Wanna Riotを披露した事である。Larsは、余りプレイしていない曲だがリクエストがあったからこの曲を披露するよ、とプレイ。誰だか知らないが最高なリクエストでした。またキーボード奏者であるKevinをバンドメンバー達も高く評価しており、Kevinに全てのスポットライトを当ててやってくれとLarsもリクエスト、数秒後...もう良いだろ俺達にライトを返せと和気あいあいとしたステージでした。バンドのバックドロップは最新作ではなくアルバム...And Out Come The Wolvesのアートであった。ラストに曲はTime BombとRuby Soho。TimはRuby Sohoの終盤にステージを降りマイクを観客へ向け一緒に熱唱。

 

Surf City Blitzのラストを飾るのは南カリフォルニアのパンクシーンを立ち上げたバンドの一つであるSocial Distortionである。会場が暗転し大歓声が起きるとTom Pettyの曲Mary Jane's Last Danceが掛かりバンドメンバー達が程なくして登場。前日のヘッドライナーThe Offspring、そしてこれまで登場してきたPennywise、Bad Religion、Rancid等がSocial Distortionに影響を受けており唯一の結成メンバーでありSocial Distortionの作詞作曲を行っているフロントマンMike Nessの存在はレジェンドである。バンドは曲Reach For The Skyでスタート。曲間のトークは極力少なく、オーディエンスはバンドの最初のギターフレーズからSocial Distortionの世界に入りこんだ感じで、パンクにロカビリーブルースをミックスさせた彼等のライブを見入っていた。途中Mikeは「俺の息子が初めてライブに来てくれたのは三歳の時で今では立派な大人になったよ」と言いMikeよりも背の高い息子をステージに呼び、お互いハグしあった後Mikeは持っていた自身のギターを息子に預け親子で代表曲Ball And Chainを演奏。息子も父親に似て首から腕に掛けてタトゥが入っている方であった。Mikeはギターを息子に託し同曲を熱唱。バンドのラスト曲はJune CarterとMerle Kilgoreの曲Ring Of Fireのカバーで締める。最後まで演奏一筋でありオーディエンスに媚びることなく曲が終わればあっさりとギターをテクニシャンに渡して舞台裏に去っていったMikeでした。

 

総評:

両日ともに良い天気で両日完売とSurf City Blitzは素晴らしいスタートを切れたと思う。ビーチという開放感あふれる会場にパンク、スカ、ロックバンド達が次々に素晴らしいライブを披露。全体的にパンクやスカが乗りやすいのかオーディエンスの反応は良かった。ベストを上げるなら一日目はThe Offspring、そして二日目はRancidである。The Offspringのライブ時全てのHuntington Beachの人々がここに集まっているのではと錯覚する程大勢のオーディエンスを一体化させ名曲を次々に披露している様は別格であった。RancidはやはりTim Armstrongのカリスマ性そしてLars、Matt、Brandenという強力なバンドメイト達が演奏をぐいぐい引っ張る関係性が好きでした。Social Distortionも素晴らしいライブでしたがやはりMike Nessの存在感が別格過ぎて他のバンドメンバー達が一瞬見えなくなる程で会場全ての目がMikeに注がれる様にソロライブみたいな感覚も覚えました。今回初開催という事もあり多々問題があったかもしれませんがレポートを書かせて頂いた運営の皆様、そしてこのレポートを読んで頂いた皆様に深く感謝いたします。

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