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全世界のメタルヘッズが待ち望むLamb Of Godの新譜が遂にドロップ

 

Lamb Of God

アルバム:Lamb Of God (2020) Epic

 

Track List:

01. Memento Mori
02. Checkmate
03. Gears
04. Reality Bath
05. New Colossal Hate
06. Resurrection Man
07. Poison Dream (feat. Jamey Jasta)
08. Routes (feat. Chuck Billy)
09. Bloodshot Eyes
10. On The Hook

 

1994年に米バージニア州にて結成、1999年にバンド名をLamb Of Godに変更。2000年初頭からメタルシーンで頭角を現しニューメタル、メタルコア、デスコアといったシーンの移り変わりを一切寄せ付けず己の音楽のみで現代メタル界の最高峰のバンドとなったLamb Of God。2018年から始まったスラッシュメタル四天王の一角Slayerのラストツアーではダイレクトサポートを任され2年間Slayerと一緒にツアーを周る。ギタリストMark Mortonは昨年ソロアルバムAnesthetic、そして今年初頭にEP作品Etherを発表するなど、精力的に活動してきた彼らだが、いよいよ5年振りの新譜が遂に発表。20数年メンバーチェンジを一切行わなかったバンドは昨年結成メンバーChris Adlerが脱退。新譜はChrisの後任となったArt Cruzのデビュー作であり、新たなエナジーを感じて欲しいとバンドはセルフタイトルに。Chrisが居なくなっても俺達は俺達だ!今回そんなLamb Of Godの新章の幕開けを宣言する新譜のレビューを掲載しました。
 

REVIEW : LAMB OF GOD - "Lamb Of God"

世界でコロナウイルスの感染が拡大、その渦中に米で起きた白人警察官による黒人男性の暴行死事件をきっかけに人種差別の根絶を目指す抗議運動が世界各地で活発化し暴動も起きる混沌とした世の中にて、Lamb Of Godはバンドの新章を宣言する新譜にバンド名Lamb Of Godと名付ける。ギタリストMark Mortonは「この作品こそLamb Of Godの全てを表しているアルバムだ。」と説明し、フロントマンRandy Blytheも、「自分達のバンド名をタイトルとして付けた事こそ、これがLamb Of Godだ、という声明なんだよ。」と説明。

 

Mark Morton:"This Album is very Representative of Everything that Lamb of God Does."

 

Randy Blythe:"Putting Only our Name on it is a Statement, This is Lamb Of God. Here and Now."

 

Randyのアグレッシブなヴォーカルはこの近年より威圧感、洞察感が研ぎ澄まされバンドのパフォーマンスを牽引する。ギタリストMarkとWillie Adlerのリフはスラッシュ、グルーヴ、シュレッド、削り落とす様なアグレッシブなサウンドは常にGuitar World等の楽器専門誌でも注目され、ベーシストで結成メンバーであるJohn Campbellはバンドのリズム隊の影の功労者として前進バンドBurn The Priest時代のデモテープから培ってきたアグレッシブなプレイは未だに健在、そして新メンバーArt Cruzは他のLamb Of Godメンバーより15年以上も若く、自身もLamb Of Godの大ファンであると公言する若きドラマーはこれまでWinds of Plague、Prong等に在籍し活躍。ArtのLamb Of Godへの愛と熱意、そしてダイナミックなドラミングは新譜Lamb Of Godをより強靭なサウンドへともたらしている。バンドはアルバムSacrament(2006)にて初めて仕事をしアルバムWrath(2009)から続いてプロデュースを担当しているJosh Wilburと一緒にFoo FightersのフロントマンDave Grohlが所有するStudio 606で同作をレコーディング。

 

新譜に先駆けて、今年の2月にシカゴのHouse Of Vansで行われたスペシャルライブにて世界初公開されたシングル曲Checkmate冒頭カウントダウンからのギターフレーズで開始するアルバムResolutionの曲Ghost Walkingを思わせる曲であり、Lamb Of God特有のヘビーサウンドに乗せ「Make America Hate Again」と現米大統領政府とヘイトに満ちた米国を真っ向から批判する非常にポリティカルな内容。Randy曰く、現米大統領は政治をパフォーマンス化しそれに釣られて躍らされている過激なサポーター達はまるでスポーツの熱狂的なファンやサポーターと同じでありそういった思いを皮肉を込めて歌った曲と説明。バンドはこれまで曲Checkmateの他に曲Memento Mori、曲New Colossal Hate、曲Routesの4曲を発表。曲Memento Moriラテン語で「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」という意味であり、冒頭緩やかでエコーのあるギターフレーズで煙の様に包まれた中をRandyの低いボイスで勇敢に進むクリーンヴォーカルで開始され、1:40頃に「WAKE UP!!」のシャウトから爆音で吹き荒れる中切れの良いギターリフで攻める曲でアルバムVII Sturm Und Drangの曲Torchesを思わせる。曲New Colossal Hateでは新メンバーArtのプレイが楽しめる曲であり目まぐるしく変わるテンポ、ロックなギターチェーンに合わせるポリリズムダブルキックを披露している。またPanteraを彷彿させるサウンドにメロディックデスメタル的なリフ、耳に残るアンセム的な熱い曲展開も非常に聴き心地が良い。曲RoutesではRandyも参加したNorth Dakota州でのNODAPL活動(地下石油パイプラインのプロジェクトによってNative American部族の環境や経済的福祉を脅かすと抗議する活動)から来た曲、米国とNative American(先住民族)の黒歴史を説いた唄でPomoインディアンであるTestamentのChuck Billyがゲスト出演しておりTestamentのスタイルをとったテンポの速いスラッシュメタルにRandyとChuckの掛け合いが絶妙に絡んだ曲。

こちらからその他の曲についても紹介していきます。そして管理人が楽曲を聴いてパッと思い浮かんだこれまで発表されたLamb Of Godの楽曲も付けています。

 

Gears: MarkとWillieのダイナミックなギターワークが印象的な曲であり、近年発表されたアルバムのどれにもフィットするメタリックな曲。Memento MoriCheckmateGearsと続く流れは文句の着けようが無いほど完璧であり、この三曲でヘドバンの嵐になることは間違いない。消費主義を批判する内容であり「So You Can't Take It With You But You Don't Use It Now/A Shallow Life To Crush You/Drive You Into The Ground」と無い事がそんなに怖いのかとRandyの追及が非常に激しい曲。

Redneck (Sacrament)Insurrection (Resolution)

 

Reality Bath: 暴動や銃乱射、争いの絶えない混沌の世において自分はこの狂った世の中が普通になっていくのが耐えられないとRandyの言葉がキャッチーなコーラスと共に突き刺さる歌詞であり、冒頭から続くJohnのミッドテンポのムーディなベースラインが非常に印象的な曲。

Engage The Fear Machine (Sturm Und Drang)

 

Resurrection Man: オルゴールの様なサスペンチックなサウンドからRandyの掛け声で始まる曲、作品中でもダークな曲でありMarkとWillieのギターワークが光る曲でこれでもかと鋭角でアグレッシブなサウンドで展開、複雑なプログレッシブ不協和音コードにダブルベースのシンコペーションで次々に襲い掛かって来る。

Omerta (Ashes Of The Wake)

 

Poison Dream: スラッシュなギターリフが印象的で中盤に登場するゲストのHatebreedのJamey Jastaが素晴らしいコラボを演出。ライブを連想させるハードコアな曲展開でありモッシュピット必死の曲である。歌詞ではRandyが環境破壊について説いている唄でストレートに「Will You Pray, Or Will you fight?」(お前は拝んでいるだけなのか、それとも戦うのか)と問いかける。

Contractor (Wrath)Erase This (Sturm Und Drang)Anthropoid (Sturm Und Drang)

 

Bloodshot Eyes: 作品中でも最もはっきりしたクリーンヴォーカルを聴かせる曲であり決してクリーン一辺倒ではないがこの曲こそ最も実験的な曲で近年バンドが試している曲展開なのかもしれない。メロディ豊かなギターリフが印象的だがヘビーなサウンドとのバランスも上手く保っている。

Embers (Sturm und Drang)Overlord (Sturm und Drang)

 

On The Hook: これまでLamb Of God特有の力強いサウンドと重いグルーヴを伴った楽曲で突っ走って来たが、最後は少し一息つけるのかなと思いきや、バンドは休ませる気は全く内容でアグレッシブな超絶ギターリフの雪崩でノックアウトさせてくれる。

Set To Fail (Wrath)

 

アルバム全体を通して押し寄せる大波に撃たれた様にトラック1から10まで激重サウンドで一気に撃ち抜かれた印象。バンドがこれまで発表してきた作品が好きな人ならば楽しめる内容であり、とにかく破壊力のあるアルバム。ドラマチックさを盛り込み、テクニカルでありキャッチーな楽曲、未だに衰えないヴォーカリストとしてのRandyの現代社会や政治を痛烈にヘイトに切り込む歌詞に極悪なシャウトを乗せて歌う新譜はメタル界の最高峰を突っ走っている貫禄に十分に威圧される作品となっている。アルバムVII Sturm Und DrangはRandyの内面を描いた非常にパーソナルな作品であったが、Randy曰く新譜は自身のパーソナルな事は控えもう少しポリティカルな内容にしたと発言している。Randy曰くバンドが発表したアルバムAshes Of The Wakeはバンド史上最もポリティカルな内容であり今回もポリティカルな要素に関しては引けを取らないと語っている。

 

人によっては初期作品にあった鬼気迫る殺気とザクザクと切刻む凶暴なギターリフが鳴りを潜めたと見る意見もあるかもしれない。管理人もLamb Of Godの楽曲の中でも取り分けヘビーな曲にはアルバムAs The Palaces Burnの曲A Devil In God's Countryをピックする。管理人的にはNew American Gospel、As The Palaces BurnAshes Of The WakeSacramentではDevin TownsendやMachineのプロデュースも影響しこれはLamb Of Godサウンドとしての第一章。そしてバンドとJosh Wilburが手を組み突き進んでいるWrathからの第二章的なサウンドがあると見ている。Randyは新譜の制作プロセスは100%コラボレーションによって出来上がった作品でどの曲がMarkの、自身のとなっていない事を説明。近年サウンドは少しずつ変わってきているも作曲センスとパフォーマンスにおいてはアルバムLamb Of Godは非の打ち所がない完成度を誇っており、他のモダンメタルをプレイするバンドとは一線を画す作品である事が十分伝わってくる。

 

ファンの多くが注目している新ドラマーArtは非常に良い仕事をしており新譜においてはLamb Of Godのドラムのポジションを見せつけた感じだ。多くのファンが抱いていたChris不在への不安はこの新譜によって軽減されるのではないだろうか。Artが15歳の時にアルバムAs The Palaces Burnが発表され恐らく学生時代からArtはLamb Of Godを聞き込んでいたと思われライブパフォーマンスでもChrisの後任をしっかりと果たしていた。American SongwriterにてMarkはArtについて「Chrisよりもロボットさが無くなった感じで、二人を比べている訳でなく、二人は全く別のタイプのドラマーなのさ。Artはもっとエナジーを感じさせるプレイをしているよ。具体的な例としては、俺とChrisはライブではクリックを聞きながらテンポを一定に牽引してパフォーマンスしていた。しかしArtとはクリック無しでその場のエナジーに任せてプレイする事になったんだよ。そういったオーガニックなプレイ環境はアルバムの制作にも影響されているんだ。」と説明しておりArtのドラムキットを打ち砕く様な激しいドラミングはバンドの新たな一歩を宣言するサウンドをもたらしている。

 

勿論、これまで発表してきた作品において常にあったChrisの圧倒的な存在感と彼がもたらして来た音楽性が無くなってしまった事は残念だが、新譜ではその失われた要素を感じさせないエナジーに溢れた作品である。Chrisが脱退した理由については昨年記事を発表しており、新譜は正にWrathからVII Sturm und Drangまでの集大成的な内容で彼等のサウンドをオーガニックに表した作品である。変わらない事が良い事なのだとハッキリわかる作品であり、その事こそChrisと決別した理由だったのかもしれない。

 

AC/DC、Slayer等多くのレジェンドバンド達がそうだったようにLamb Of Godもまた自身が培ってきたサウンドの一貫性を保っていくスタンスの様だ。良い言い方をすればファンの信頼を一切裏切らない、ブレないアルバムを作ったことだ。アルバム全体のリズムアプローチの強いハイレベルなグルーヴメタルはLamb Of Godにしか出来ないサウンドであり、TestamentとHatebreedとの共演はメタルファンの興味をそそるコラボ、そしてRandyは「もう一つのMetallicaやSlayerは存在しない」と発言していたが、Lamb Of God自身も一つしかないバンドなのだ。Randyも言った様に、もう一度言おう。

 

THIS IS LAMB OF GOD, EVERYONE

 

 

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