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このコーナーでは、アメリカ西海岸Orange County(OC)にて行われるライブレポートをお届けします。

第35回: Knotfest Los Angeles 2021  - Los Angeles, CA
 

2012年にSlipknotの地元Iowaにて開催されたバンド主催のKnotfestから9年、昨年のコロナウイルスの感染拡大に伴いフィジカルなライブ音楽が停止したが、遂に南カリフォルニアにKnotfestが帰って来た。これまでは数日間開催したフェス、Ozzfestとタッグを組んだフェス、そして2019年にはツアー形式のRoadshowとなって南カリフォルニアで行われてきたKnotfest。今回は一日のみのフェスとなりヘッドライナーはSlipknotサポートに現ラウドロックシーンにおいて最も勢いのあるBring Me The Horizon、メタルシーンにおいて大きな存在となったKillswitch Engage、現ラウドロックシーンの革命児Fever 333、ハードコアパンクシーンにおいてカリスマ的な存在となったCode Orange、2012年に結成し近年活動の範囲を広げてきているロックエンターテイメントグループCherry Bombs、そしてSlipknotのフロントマンCorey Taylorの息子GriffinとパーカッションShawn ”Clown” Crahanの息子Simonを擁するメタルVendedが出演。

Main Stage (First Half):Killswitch Engage、Fever 333、Code Orange、Vended.

 

11月5日、南カリフォルニア大学の横にあるBanc Of CaliforniaスタジアムにてKnotfest Los Angeles(LA)が開催。これまで南カリフォルニアで開催されてきたKnotfestはSan Bernardino市にあるGlen Helen Amphitheaterにて行われていたが、今回は2018年にオープンしまだ新しさのあるBanc Of Californiaスタジアムで開催。秋が到来した穏やかな晴れ間の金曜日、Knotfest会場前にはライブ音楽の復活を喜ぶ多くのMaggots達で賑わっていた。昨年コロナウイルスの感染拡大によりライブ音楽が停止した事により、生の音楽ライブ、そしてSlipknotのライブを心待ちにしているファン達の顔には、この日をどれだけ待ったことか、と語っていた。

Slipknotは9月に地元Iowaにて行ったKnotfest Iowaを皮切りに全米ツアーKnotfest Roadshowを行ってきた。コロナウイルスの感染が懸念される中Slipknotは徹底した感染予防策をツアー全体に張り、大人数でツアー移動するこの狂気のサーカスの最終地点としてこのKnotfest LAを選んだのである。ツアー中に感染者が出れば中止もあり得るKnotfest LAはSlipknotにとっても大きな目標だったに違いない。Slipknot、Knotfest出演アーティストそしてツアークルーの頑張りによってここまで感染者数ゼロに抑え込み、コロナ化においてSlipknotの勝利宣言ともいえるKnotfest LAが開催される事となったのだ。新曲The Chapeltown Ragをリリースし新章へ突入したSlipknotは、Knotfest LAでのライブパフォーマンスをストリーミング配信する事を発表しておりバンドにとっても、世界中のMaggots達にとってもKnotfest LAは意味のあるフェスとなった。

午後1時に開場。Banc Of Californiaスタジアムでは感染対策として入場者にコロナウイルスワクチンの接種完了証明書、もしくは72時間以内のPCR検査の陰性結果を提示する事を義務化しており、場内ではマスク着用という事になっていた。裏方のクルースタッフ、場内のスタッフ、セキュリティー、そしてメディア関係者はマスク着用は大体守っていたのだが、オーディエンスのマスク着用は半々といった所であった。そしてステージがあるフロアエリアではチケットを制限していたのか割とスペースがある様に感じた。ヘッドライナーSlipknotが登場した時間帯でもフロアエリアには十分なスペースがあったためステージから少し離れていても十分に人と人との距離が保てる状態であった。

開場から約一時間後トップバッターでIowa、Des Moine出身Vendedが登場。SlipknotのフロントマンCorey Taylorの息子Griffin(vo)とパーカッションShawn ”Clown” Crahanの息子Simon(dr)を擁するメタルバンドである。昨年から本格的に活動を開始したVendedは現在までオフィシャルで2曲Asylumと曲Burn My Miseryを公開している。多くのオーディエンスも彼等のバックグランドを知っているためSlipknotファミリーであるバンドには大きな声援が起こっていた。SimonのパワフルなドラミングにCorey TaylorのDNAを受け継いだGriffinのフロントマンとしての素質は素晴らしい所だが、Cole Espeland(g)とConnor Grodzicki(g)のスラッシーで攻撃的なギターリフ、そしてJeremiah Pugh(b)とSimonがしっかりとリズムを作っている。バンドは曲Flavored Tareや曲Anti-Bodyといった曲も披露。彼等のインタビューを見たがバンドはこれまで人前でライブを行ったのは5回と発言しており(バンドはRoadshowツアーには出演していない)、この日はバンド初となるIowa以外でのライブだそうだ。昨年はコロナウイルスの影響もあり思う様にライブ活動が出来なかった事もありまだこれから覚えて行く事も多いだろう。父親のライブを直ぐ近くで見て来たGriffinとSimonの存在は大きく、6回目のライブがBanc Of Californiaスタジアムであるが大勢のオーディエンスの前でも全く動じないGriffin(高校を出たばかりの19歳)、そしてSimonの腕を大きく振り回し暴れる様なドラミングプレイは管理人も大好きだ。またバンドは11月12日にデビューEP作品をリリースする事をステージにて報告。この先一緒に楽曲を制作していくことになるプロデューサー等によって音楽は変わるかもしれないし今後が楽しみなバンドである。これまでMudvayne、40 Below Summer、Downthesun、Dirtfedd等を手掛けたShawnがVendedのプロデュースもするのだろうか。

二番手にはCode Orangeが登場。バンドはメンバーが高校時代の時にカオティックハードコアConvergeのフロントマンJacob Bannonに見出され高校生にも関わらずJacobの経営するDeathwishと契約。その後2枚のアルバムを発表後Roadrunnerと契約しアルバムForever(2017)が業界内で大きく評価されGrammyアワードにも選出。そして昨年発表した最新作Underneathも高評価を得て二度目となるGrammyアワードに選出され今やハードコアパンクのシーンにおいて最もカリスマ性のあるバンドとしてメジャーそしてアンダーグランドシーンから注目を受けているバンドだ。最新作UnderneathからのオープニングSEである(deeperthanbefore)が掛かり大きな声援の中メンバー達が登場し同作から本格的にリードヴォーカルへ担当(それまではドラム兼ヴォーカルだった)となったJami Morganが登場、「Thinners of the herd」の絶叫で曲Swallowing The Rabbit Wholeがスタート。ライブでは正に蜂の巣を突かれ、襲い掛かるように辺りを飛び回る蜂の如くメンバー達は狂った様にヘドバンしステージを動き回りながら演奏。重苦しいギターフレーズから始まる曲はボディブローの様に攻撃的であり、メンバー全員憤怒に満ちた激情のパフォーマンスがそのまま伝わってくる様だった。ギタリストDominic Landolinaがこれまでシェイブされた頭だったのが突然髪が生えていて一瞬新メンバーかと見間違ってしまった。マルチ奏者Eric Balderoseもロングヘアだったのが短くなっていた。そして先日加入が発表されたMike Portnoyの息子でありTallahでも活動するドラムMax Portnoyも顔が爛れたようなマスクを装着しオーディエンスを煽る。これまでドラムの位置にいたJamiが前に出て来た事でオーディエンスとのコミュニケーションがより深まった感じであった。バンドはヘドバンの嵐となる曲In Fearと曲Cold.Metal.Placeをプレイ後、ギタリスト兼ヴォーカルReba Meyersがリードヴォーカルを務める曲Bleeding In The Blurでメロディアスな楽曲を持ってくる。バンドはライブでは定番となっているアルバムI Am King(2014)からの曲My Worldをこの日もプレイし最後はシングル曲Foreverで締める。因みにステージ衣装やJamiのマイクスタンド、ステージに設置されているシルバーのフェイスアート等全てメンバー達の自作だそうだ。こういうスタジアムで開催される大きなフェスにハードコアパンクシーンからのバンドがプレイしてくれるのは本当に嬉しい限りである。

Code Orangeの次はLA郡にあるInglewood出身のFever 333である。インタビューでフロントマンJason Butlerはこの日スケートボードで自宅からスタジアムに来たと発言。ドラムAric Improta、ギタリストStephen Harrisonが登場しJasonが登場すると地元のバンドに大きな歓声が起き最新作Wrong Generationに収録されている曲Bite Backからスタート。これまで何度かFever 333のライブは見てきたがフロントマンJason(前バンド.letliveでもそうだったが)はステージを動き回り全く予想外の行動にでる事が多く、この日も非常にカメラに捉えにくいライブとなった。インタビューでJasonは、その日に出演するステージの下見は一切なく、ステージに登場して視界に写ったもので使えそうなものがあればすぐに直観で「これ使える」と決め実行するようだ。マイクスタンドを叩き折ってから、ドラムライザーをひっくり返そうとしたり、オーディエンス側の観客席に上っていきオーディエンス達と一緒に熱唱、ステージ脇にあったゴミ箱を被り熱唱する等Jasonは変わっていなかった。​セットリストはデビュー作Strength in Numb333rs(2019)とEP作品Made An America(2018)からの楽曲をメインに演奏。曲Burn Itのプレイ時にJasonはステージ脇から脚立を持ち出してきてステージに設置し脚立の上で熱唱、そしてその脚立を今度はステージの下に持って行きオーディエンスの前に立たせ、Burn Itを熱唱しながら脚立からダイブ。ラスト曲Hunting Seasonでは終盤にJasonがステージにあるもので一発パフォーマンスをする事が恒例化しており、この日Jasonはステージアンプとライザーを組み合わせており何が出来るのかオーディエンスの殆どがスマホを掲げているとJasonは持っていたスケートボードでアンプの上をレールを滑る様にスライド。(動画13:50)これには会場から歓声が上がっておりFever 333は大歓声の中フィニッシュ。先に出演していたCode OrangeそしてFever 333のライブ時にはステージ脇にて後に登場するBring Me The Horizonのメンバー達が2バンドのライブをずーっと見ていた。Bring Me The HorizonとFever 333は一緒に全米ツアーを行った事はあるが、今後Code Orangeとのツアーもあり得るかもしれない。

そして次はKillswitch Engageの登場だ。Slipknotとも何度も共演経験があり20年以上のキャリアを持つバンドの登場にメタルホーンと共に大きな歓声が起こる。アルバムIncarnate(2016)からの曲Hate By Designでスタート。オーディエンスでは右と左側にてサークルピットが発生。ベーシストMike D'Antonioはステージを歩き周り激しいヘドバン、ギタリストAdam DutkiewiczとJoel Stroetzelは定位置からプレイ。曲が終わるとAdamは「こんなものはモッシュピットとはとてもじゃないが呼べない、突っ立っている奴らの肛門に浣腸をかまして動かせ、そしてもっと巨大なピットを作るんだ」とAdam節がさく裂。これに大歓声で応えたLAのファン達は早速大きなピットを作りテンポの速い曲The Crownless Kingに合わせてサークルピットを展開。バンドも満足したのか代表曲My Last Serenadeそして人気の高い曲Rose Of Sharynをプレイ。フロントマンJesse Leachは「君達がどんなポリティカル思想を持っていようが、どんな信仰心であろうが俺達は仲間だ。今はその思いやりが必要な時なんだ」と曲US Against the Worldを披露。バンドは次に最新作Atonementからの曲The Signal Fireをプレイ。同曲にはゲストに元ヴォーカルHoward Jonesが出演している曲。昨年のパンデミック前にバンドはHowardを擁するLight The Torchとツアーを行っていたもの、コロナウイルスの影響によりツアーが延期となっていた。同ツアーにて注目されていたのがHowardをゲストに迎えた曲The Signal Fireの演奏であった。延期発表から1.5年、バンドは先日ようやく振替公演を2022年に行う事を発表。パンデミックによって停止された活動を取り戻そうとJesseとAdamは高いテンションでオーディエンスを盛り上げていた。特に精神的な病気を持っている事を度々発言していたJesseはライブ中終始笑顔が絶えなかった事が印象的であり、オーディエンスだけでなくアーティスト達もコロナウイルスからの復活を心から喜んでいるようだった。バンドはシングル曲My Curse、The End Of Heartache、In Due Timeそしてカバー曲Holy Driverでオーディエンスを盛り上げる。ライブ終盤、Adamが今度会う時は酒を飲みかわそうぜ的なジョークを飛ばしたもの、自身でスベッた感があったからなのか「もおいいや、次の曲行くぞ」と横を向いてしまう時MikeやJesseも、Adamのジョーク失敗したな、と笑っていた。いつまでも仲の良いKillswitch Engageで居て欲しいものだ。

Main Stage (Second Half):Slipknot、Bring Me The Horizon、Cherry Bombs。

 

太陽が沈み始めKnotfest LAの後半に突入。Killswitch Engageがステージを後にし、スタッフ達が急ピッチで次のCherry Bombsのステージの用意をしている。コロナウイルスの感染対策としてSlipknotは裏方スタッフ/クルー、関係者、セキュリティーにおける全ての人員に対しマスク着用を義務付けており、先程Code OrangeやFever 333のライブをサイドで見ていたBring Me The Horizonのメンバー達も全員マスクをしていた。

ステージが暗転しオープニングSEと共にバックスクリーンにはCherry Bombsのロゴが。メンバー達が登場するとSpiritboxの曲Holy Roller(5:40)がスタートしパフォーマンスがスタート。Cherry Bombsはロック/ラウド/メタル系の音楽をバックにパフォーマンスを披露するエンターテイメントグループであり、この日のライブではNine Inch Nails、Rammstein、Prodigy、Refused等の楽曲を使用。ダンスパフォーマンスだけでなくアクロバティックな演出と見せ場があり、紐を使って宙吊りになるパフォーマンスや火を使ったパフォーマンスも行う。インタビューにてメンバーAliciaさん(Coreyの奥さん)は、今回のKnotfest LAはスタジアム公演であるためCherry Bombsエンターテイメントのスケールも普段よりも大きくして挑んでいる事を説明。また、火を使ったパフォーマンスの為に公演会場の地区にある消防局にコンタクトを取り許可を得る等Aliciaさんはライブ以外にもやる事は多く大変な毎日と発言。

そして遂にBring Me The Horizon(BMTH)の登場である。バンドは2015年のKnotfestに出演、そして日本のKnotfest Japanにも出演しており今回6年振りのKnotfest出演である。会場が暗転するとスタジアム全体で大きな歓声が起きる。メンバーが登場すると昨年リリースした最新EP作品Post Human: Survival Horrorからの曲Dear Diary,でライブがスタート。テンポが速く、テンションが高いヴォーカルパフォーマンス、Lee Malia(g)、Matt Kean(b)、Matt Nicholls(dr)、Jordan Fish(k/vo/per)、John Jones(g)の演奏チームは全員ヘドバンと近年のBMTHにしてはかなりハードでメタルな曲だ。メタルフェスという事でバンドも攻めの姿勢で多くのMaggotsとメタルオーディエンスの注目を集める。そして次に持ってきたのはNu Metal要素を持つ同作からの曲Teardropsである。D KeyをブリッジにLinkin Parkの音楽をも連想する曲で多くのオーディエンスがフロントマンOli Sykesの唄と一緒に合唱しているのが印象的だった。アルバムAmo(2019)からのシングル曲Mantraをプレイし、Oliはオーディエンスに巨大なサークルピットを要求、アルバムSempiternal(2013)からの曲The House Of Wolvesをプレイ。Oliは昨年から感染が拡大し自身を含め多くの人々の生活に影響を及ぼしたコロナウイルスに「Fuck You Corona!」と叫び曲Parasite Eveを熱唱。バンドもその後曲Shadow Mosesと最新曲DiE4uを披露したがオーディエンスの多くが合唱しておりSlipknotやメタルファンからも受け入れられている事がよく分かるライブであった。思えば2015年のKnotfestにBMTHが出演した時はアルバムThat's The Spiritをリリースしたばかりであり、当時はKnotfestオーディエンスでBMTHに興味がある人が半々程であった。オーディエンスとの距離がまだ少し浅くSlipknotの十八番的なオーディエンスを座らせるパートがあったがBMTHの要求をのまない人も多かった。あれから6年、BMTHを取り巻く環境は代わり、彼等の音楽を好んで聴き入れるオーディエンスが増えた事は間違いなかった。前奏という立ち位置であるItch For The Cure(When Will We Be Free?)からの曲KingslayerではOliがメロディを口ずさむ感じでスタート(SlipknotのCoreyが曲Custerを唄い始める時の様な感じだ)。この曲ではスタジアムの上段に座っているオーディエンス達も総立ちで盛り上がっていた。曲Drownの演奏時にはOliがステージを降りてオーディエンス側を歩きながら熱唱。ステージは二段のステップがあり上段ではJordanとMattがプレイ。いつも激しい演奏でライブを盛り上げているMattがステップを行き来しながらプレイ。LeeとJohnは定位置から余り動く事はなくプレイ。曲ObeyではゲストであるYungbludが登場しコラボ、これにはオーディエンスも大いに盛り上がった。OliはMCにて自身が14歳の時にSlipknotのライブに行き、Slipknotは最初にライブに行ったバンド達の中の一つであり、もし当時の自分にサポートバンドとして未来で共演出来ると言えば14歳の自分は発狂するだろうと発言。セットリストはSemptiternalから最新作Post Human: Survival Horror(1x1、Ludens、One Day The Only Butterflies Left(略)はプレイしなかった)までの楽曲で構成。EvanescenceのAmy Leeとのコラボ曲One Day The Only Butterflies Leftのライブパフォーマンスは恐らくBMTHとEvanescenceが一緒にツアーをするか同じフェスに出演するかで実現するかもしれない。曲Can You Feel My Heartを演奏し終わるとMattは膝をついて息をしておりメンバー全員が全力でKnotfestのリベンジを果たすべくプレイしていた事が伝わった。そしてアルバムThat's The Spiritの曲Throneがラストとなった。余談だが、Knotfest LAの前にCorey TaylorとOliがリモートで対談しており、その中でCoreyが初めてBMTHを知ったのが曲Eyelessのカバーであり当時はEyelessの生生しいエナジーをキチンとキャプチャーしており大好きだったと語っていた。この対談を聞いていた管理人はもしかしたらBMTHはEyelessカバーをKnotfest LAで遂にやってくれるのではと期待していた。残念ながらEyelessカバーは無かった。しかしその後のSlipknotのライブでもEyelessは(ライブでは頻繁にプレイする曲なのだが)やらなかった。もしかしたらCoreyは「Eyelessカバーしたかったらどうぞ、俺達はやらないからさ」という感じでSlipknotもEyelessを譲った感じでセットリストに入れなかったのかもと思ってしまった。

昼間は照り付ける太陽で夏の様な暑さだった会場が一転冷たい空気になった夜、とうとうヘッドライナーSlipknotの時間となった。バンドロゴのカーテンが敷かれたステージが暗転しAC/DCの曲For Those About To Rock(We Salute You)がかかる。スタジアムに居る全てのオーディエンスがステージを向きSlipknotを今か今かと待っている。近くに居たセキュリティーもヘッドライナーの出演を前に緊張していた様だった。小さな爆発と共にカーテンが上げられアルバムWe Are Not Your Kind(2019)のオープニングInsert Coinが掛かる。南カリフォルニアのSlipknotライブは2019年のKnotfest Roadshow以来の約2年振りであるがステージセットは前回と余り変わっていない。というか、Slipknot自身アルバムWe Are Not Your Kindのプロモーションが完了していない時点でパンデミックを迎えた事もあり同じセットというのも納得がいく。本来ならばこのセットを数年かけてツアーしその後新譜を制作し発表する頃には新しいセットを用意するという計画があったはず。まさかアルバム発表後の二年後に新譜の話をする事になるとは思ってもみなかったであろう。もしSlipknotが新しい作品を発表する事になってもこのセットでツアーする様な気がする。Insert Coinをバックに先にステージに現れたのはドラムJay WeinbergとサンプルCraig Jonesである。Jayは大歓声のオーディエンスに応えるかのように両手を広げる。そこで曲Unsaintedのオープニングになると他のメンバー達もステージに現れて演奏がスタート。最初は分からなかったがスクリーンに映し出されたJayを見て新しいマスクだと気づいた。曲Unsaintedのブレイクダウン時ではDJ Sid Wilsonのスクラッチに乗せてバンドと共にスタジアム全体でのヘドバンだ。次にバンドはアルバムIowa(2001)からの曲Disasterpieceをプレイ、暴力的であり混沌としたサウンド、Coreyのデスボイスも強烈に突き刺さってくる、しかしサビはキャッチー。新旧曲のコンビネーションで幕を開けたSlipknotライブ。パンデミックの影響でライブに飢えていたMaggots達は狂乱状態となっている。そんなオーディエンスをCoreyは「Welcome To Dream Come True」と叫び、バンドもこの日をずっと待っていたと発言。よく見ると登場時はダンスホールボールの様なClownのマスクが赤色のマスクに変わっていた。バンドは最新作からのシングル曲Nero Forteをプレイ。ここからバンドは怒涛のシングル曲/人気の高い曲ラッシュでオーディエンスのモッシュをより地獄に叩きこむ。曲Before I ForgetThe Heretic AnthemPsychosocialThe Devil In Iとプレイ。メンバーでいち早く新マスクを公開したCoreyであるが死んだ魚の様な目の部分が非常に不気味である。そしてこの日お披露目となったJayの新マスクであるが口の部分がこれまでチャック、そして縫い合わせた感じの閉じたマスクだったのが、故Paul GrayのVol3やAll Hope Is Gone時代の口部分に隙間がある感じになっており、全体的によりドクロ化した感じである。ギタリストJim Rootは前回見た時よりロングヘアーになっておりヘドバンで扇風機の様に回せる様になっていた。ギタリストMick Thomsonは首を振りながらプレイし巨体をかがめてヘドバンする姿は相変わらず、MickとJimは時折ステージの左右を入れ替えてプレイ。DJ Sid Wilsonはステージの上段と下段を行き来してオーディエンスを煽り、DJ近くにあるオートウォークで踊ったりする。以前の様にステージを走り回り高い所から飛び降りる、Shawnのパーカッションにぶら下がる等は無くなったが、それが原因で骨折した事もあるので今は怪我をしない程度で客を楽しませるステージパフォーマンスになった感じだ。2019年に加入した”Tortilla Man”はバックヴォーカルを務めながらパーカッションやマーチングドラムをClownと共にプレイ。パーカッションの上で激しく踊り狂う、ジャンプで飛び乗りヘドバンする等結構激しいアクションを披露している。Tortilla Manの中身とされる方は前やっていたバンドでもキーボードをプレイしながらドラムに突っ込んでダイブする等破天荒な方だったらしいので今後もっと激しいアクションを披露してくれるのかもしれない。ベーシストAlessandro ”V-Man” Venturellaは曲The Devil In Iプレイ時にステージ上段にあるパイロ装置の前でプレイ。炎が噴き出ている近くでのプレイに管理人は、近いな危ないな、と見ていたのだがナントV-Man​のベースにパイロ装置が付けてありそこから炎をだし新しい演出を見せてくれた。そしてこの日は先日リリースしたばかりの新曲The Chapeltown Ragをライブで初披露。改めてCoreyの歌唱力の凄さを見せつけた新曲でありダークでキャッチーなコーラス部分、曲構成もSlipknotらしさ全開でありファンの期待を裏切らない良曲である。ライブではClownとTortilla Manがマーチングドラムをプレイするパートもあった。今後の展開が楽しみになる新曲である。バンドはシングルWait And BleedVermilionAll Out LifeDualitySpit It Outとプレイ。曲Dualityでは前回から披露していたClownの炎のバットが登場し火が付いたバットでパーカッションを叩きまくっていた。後で知ったのだがClownはこの日バットでパーカッションを叩いた事で二頭筋腱断裂を起こしており後日手術を受けたそうです。曲Spit It Outでオーディエンスを座らせる演出の部分ではCoreyの要求に応じて殆どのフロアエリアのオーディエンスが座る。スタジアム全体で一斉に立ちあがりMaggotsの一体感をみせたライブだった。少しの休息を挟みアルバムIowaからのイントロ(515)が掛かり再びSlipknotがステージに登場。ここからアンコール曲である曲People=Shit、(sic)、そしてMaggots達のNational AnthemであるSurfacingで締める。ヘドバン必死の3曲のラッシュにモッシュはより激しさを増しこの停止した2年間の鬱憤をはらすかの様にオーディエンスもサークルピットで走り回っている。Surfacingの終了直後にはスタジアム後方から花火があがりスタジアムが大歓声に包まれた。そして他界したPaul GrayとJoey Jordisonを追悼する映像がスクリーンに。ライブのMCでCoreyは、今この国では様々な思想によって分断されている状態となっている、しかしポリティカル、信仰、人種等関係なくMaggotsだけは仲間で居て欲しいと発言。そんなCoreyとSlipknotの思いに応えるべくオーディエンスは一体となりKnotfest LAを楽しんだ。Knotfestが終了となりメンバー達はオーディエンスに何度も頭を下げていた、またオーディエンスの中には目に涙を浮かべてSlipknotに感謝する人々もおり、バンド/ファンがお互いを支えリスペクトする関係に心が温まる感じがした。コロナウイルスの感染が続いている中、Slipknotは到着点であるKnotfest LAを絶対に行うという使命感があった。LAのファンそして世界中でライブのストリーミング配信を待っているファン達の前で中止はあり得ない、バンドそしてKnotfest関係者全ての頑張りのお陰でKnotfest LAが完成されたのだ。Slipknotと出演バンド達そしてKnotfest運営や関係者に感謝です。本当にお疲れ様でした。

以上Knotfest LAライブレポートでした。管理人もこの二年間フィジカルなライブ公演を心待ちにしておりました。その思いもあり、あれもこれもと長いレポートとなってしまいました。ここまで読んでくれた方本当にありがとうございました。そして取材を許可して頂いたKnotfest運営、マネージメント関係者そしてSlipknotには心から感謝いたします。最後にコロナウイルスの感染が懸念される中、サポートして快く送り出してくれた家族にも感謝です。

Inside the Knotfest Los Angeles 2021:

 

こちらではKnotfest Los Angeles 2021でのメインステージ以外の写真をお届けします。Banc Of Californiaスタジアムの外に設置されていたSlipknot Museum。メンバー達のマスクや衣装、これまで受賞したアワード、メンバー達の機材等が展示されています。Knofestのフロアエリアの中央にはMonster Energyドリンクを無料で提供するMonster Energyドリンクバーが設置。また会場内ではSlipknotの地元Iowa州でクラフトウイスキーを作るシダーリッジ蒸留所とコラボしたバンド公式ウイスキーNO.9 IOWA WHISKEYをテイスティング出来る所もありました。Clownが先日オープンしたカナビスビジネスClown Cannabisも出店しておりマーチ等を販売。そしてSlipknotメンバー達が出席したファン達とのQ&Aセッションも開催。コロナウイルスの感染によりライブ音楽やフェスが無くなった事で多くのオーディエンスがKnotfest LAを楽しんでいた。分からなくはないが、久しぶりのフェス、久しぶりのライブという事で羽目を外す人々もおりアルコールを飲み過ぎてモッシュ内でフラフラになっている人やフロアに座り込んで動かなくなっている人も多く見かけた。

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