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このコーナーでは、アメリカ西海岸にて行われるライブレポートをお届けします。

第37回: Dethklok & Babymetal BABYKLOK Tour 2023 - Los Angeles, CA
 

BabymetalそしてDethklokのツアーが実現。アニメシリーズMetalocalypseに登場する架空のヘビーメタルバンドDethklok。メタルの神「キツネ様」のお告げに沿って、「メタルレジスタンス」として活動(今年には復元計画「THE OTHER ONE」を完逐しキツネ様より新たなBabymetalとして召喚)、プライベートでは「世を忍ぶ仮の姿」として活動している設定であるBabymetal。DethklokとBabymetal、それぞれ異なる設定によってなりたっているが、根本にあるのはどちらもメタルであるという事。アニメのメタルバンドであるDethklok。そしてメタルの神によって活動しているBabymetal。そして、DethklokはDethalbum IV、BabymetalもTHE OTHER ONEと新アルバムを今年リリースしている。これまでMastodon、Lamb Of God、Machine Head等とツアーをしてきたDethklokだけにBabymetalとの合同ツアーはサプライズでもあった。Dethklokは聴いているけどBabymetalは聴いて無い、逆にBabymetalのファンはDethklokを聴いた事が無い人も多いかもしれない、双方の新作のプロモーションも兼ね、新たなファンを獲得する舞台を作り上げる為、共にメタルを愛するDethklokとBabymetalが手を組み行うBabyklokツアー。サポートアクトにはギタリストJason Richardsonが参加。今回、そんなBabymetalとDethklokの奇跡のタッグツアーを取材する事ができました。取材の声を掛けて頂いたDethklokのマネージメント、そしてBabymetalの撮影/掲載を許可して頂いたBabymetalのマネージメント、関わって頂いた全ての関係者に感謝を申し上げます。
BABYKLOKツアーのLA公演は完売。そして追加で発表された二日目のLA公演も完売。今回の会場は2020年にオープンしたSoFiスタジアムの敷地内にある付属のコンサートホールで2021年にオープンしたYouTube Theaterにて行われた。Sofi Stadium/YouTube Theater共に同地で有名なThe Forum(The Kia Forum)の南隣に位置しており、これまで管理人はThe ForumでSlipknot、System Of A Down、Bring Me The Horizon等を見てきたが近年は余り来ることが無かったので久しぶりに同地に向かう事となった。新しいSofi Stadium/YouTube Theaterの誕生により近隣が大分変ってしまっていた。元々はHollywood Park競馬場であった土地が総合的商業スペースになり、ホテルや住宅地、公共施設等が建設され新しく再生された同地に圧倒されながら会場に到着。因みに、同日Forumでは$uicideboy$ヘッドラインの
トラップメタル/エモラップツアーであるGrey Dayツアーの公演となっており、GhostemaneやCity Morgue等を見に来たファン達が同地に詰めかけており、長い車の列を見ながらDethklokとBabymetalの人気は凄いなーと思っていると半分はGrey Dayに、半分はBabyklokに行っている感じだった。スムーズにYouTube Theaterに入ると同会場のディレクターであり、今回取材のコーディネートして下さった方と出会いこの日の撮影ルールを確認。DethklokとBabymetal共にそれぞれ違った撮影ルールがあり、特にDethklokはステージ前のピットからの撮影は厳禁で後方サウンドボードエリアからの撮影となっていた。Babymetalはオープニングからの3曲ではなく途中からの撮影となっており、ありがたい事にピットエリアからの撮影を許可してくた。Jason Richardsonは通常通りのピットエリアから最初の3曲ルール。コーディネーターの方と共に会場内を散策し、数年前に建てられたばかりの新しい会場をワクワクしながら見て回る事ができた。マーチテーブルには各アーティスト達のマーチが並んでおり、開場から終演までマーチを買い求める列が途切れる事は無かった。

この日のトップバッターはChelsea GrinやBorn Of Osirisに在籍した経歴を持ち、現在All That Remainsで活躍するギタリストJason Richardsonがソロアーティストとして出演。昨年リリースした最新ソロ作IIのオープニングトラックであるTendinitisのSEと共に登場。レッドのローブを纏ったJasonはステージ中心に来るとプレイ開始。残念ながらJasonのソロアルバムでドラムを務めたLuke Hollandは現在Falling In Reverseのドラムとしてツアー中という事もありJasonのみの出演であった。Jasonの十八番であるプログメタルコアをベースにジャズ、フュージョン、ブルータルなギターフレーズを組み込んだインストメタルはこの日も健在。ギター以外はバックトラックを使用している事でステージ前だとサウンド的にはバランスの悪い場面があったもの後方ではキチンとJasonの技巧派ギタープレイは聴けた。Jason自身がDOOMとコンポーザーMick Gordonのファンである事は有名であり、そんなJasonがゲーム音楽の雰囲気を演出しブルータルなフレーズを入れたアルバムIIからの曲Ishimuraをプレイ。最新作からはSparrowとUpside Downもプレイ。ファーストアルバムIからはTitan、Retrograde、Hos Downを披露。Hos DownについてJasonは「Babymetalの曲には本当に多くのジャンルが詰め込まれているよね、僕の最後の曲もそんな感じだよ」と多彩なジャンルの演奏に変わっていくHos Downをプレイ。プログメタルコア/Djentをベースに自由な展開ながらもドラマ性もあるJasonの得意なテクニックを一目見ようと、会場に居るオーディエンスもJasonのプレイをじっと見ている感じであり曲が終わるごとに温かい声援が送られていた。BABYKLOKが始まったなと実感させてくれるトップバッターでした。
次に登場したのはBabymetal。今回、管理人にとって初めてとなる生のBabymetalのライブであり楽しみにしていた。メタルとJポップのフュージョンで世界中でセンセーションを巻き起こしているBabymetal。ヘビーなギターリフから、感染力のあるメロディー、そしてBabymetalがライブで魅せるシンクロしたダンスまで、シームレスに移行しながら観客をワイルドなBabymetal独自の世界へと誘い、Babymetalが見せて来たロードは日本人に限らず、日本語も分らない世界中の人々を熱狂させてきた。
会場が暗転すると演奏隊である西の神バンドが登場。Alustrium、Galactic Empire、Miss May I、As I Lay Dying、All That Remains、Beneath The Massacre等で活躍するメンバー達がSlipknotのMick Thomsonの様なマスクを被っている。神バンド半分はスキンヘッドの人達らしいが布のヘアーまで付いており誰が誰だか分からない様になっている。オープニングソングBabymetal DeathのSEと共にバックスクリーンに「BABYMETAL WORLD TOUR 2023」の文字が浮かび上がり会場は大きな歓声に包まれナレーションが始まる:
遠い昔、遥か彼方のMetal Galaxyにて、キツネ様は、新たに生まれ変わった3人のメタルスピリッツを選び、未知なる未来が待つ"METALVERSE"へと召喚した。BABYMETALの魂は、言葉の壁を越え、世代を越え、世界を駆け巡り、無数の伝説を生み出した。生と死。始まりと終わり。この無限のループの中で、魂は生き続ける。しかしBABYMETALにとっては、己を超越することだけが残された道なのだ。ヘッドバンギングをする準備はできているか?今こそMETALVERSEとBABYMETALの時だ。
演奏がスタートしBabymetalの登場に大歓声が続く。Babymetal Deathは色々なメタルソングのトリビュートやリスペクトが感じられ、管理人の好きな曲の一つである。Babymetalの衣装は以前よりも派手な外見になり何層にも重なった煌めくプレートが特徴的で光の加減で金色や虹色に爆発する。Babymetal Deathで会場を盛り上げ、続いてはスクリーンに「Give Me」のメッセージが上がるとオーディエンスから「Chocolate!!」と返され曲Gimme Chocolate!!が開始。元The Mad Capsule Markets、現AA=の上田剛士氏が作曲した事で知られている。同曲が収録されたセルフタイトルは来年で既に10年目、本当に年月が経つのはあっという間と言う感じだがBabymetalはリリース当時のテンションと共に同曲をパフォーマンス。続いてのPA PA YA!!のパフォーマンスには飛び跳ねるオーディエンスから「PAPAYA!」の掛け声が響き渡る。中盤に差し掛かるとヒップホップF.HEROがスクリーンに登場しマシンガンの様のラップでコラボ。次には神バンドの演奏が光るDistortionがさく裂。Su-Metalは「Can't stop the power...」と宣言し他のメンバーと共に熱狂的なシンクロダンスを披露。そしてトラップメタル系のBxMxCを披露。Su-Metalのファルセットを使ったソロフロウパートでは会場から大歓声が起きる。それから最新作The Other Oneからの曲Believing、Monochromeと続き、神バンドのソロパフォーマンス、そして最新シングルMETALI!!と立て続けに披露。Monochromeの途中では会場のオーディエンスに携帯のライトを点灯させる演出をする。先程披露したPA PA YA!!は南国感なお祭りだったのに対し、和テイストなMETALI!!の中盤ではオーディエンスを一度座らせる演出をする。新メンバーであるMomometalの「躍る阿呆に見る阿呆」掛け声と共にソロダンスが開始。新メンバーにスポットライトを当てる演出にオーディエンスも盛り上がり、赤く染まったステージに「Are You Ready?」の絶叫と共に皆が立ち上がるとスクリーンにRage Against The MachineのTom Morelloが登場し一緒に盛り上げる。和のお祭り騒ぎはお次のMegitsuneに持ち越され、オーディエンスも踊りまくる。夏の楽しみをもうひとときだけ取り戻し、ステージ上のコントロールされた熱狂が曲の終わりへと運んでいく。終盤にはHeadbangeeeeerrrrr!!!!!、そしてRoad of Resistanceで締める。Moametalは前方のファン達と目を合わせカウントダウンしファン達もレスポンス。オーディエンス後方では神バンドのシュレッドに合わせてサークルピットも発生していた。最後にSu-Metalの「We Are...」のコールに会場全体で「BABYMETAL!!」と応えていた。Su-metalは、MoametalとMomometalと共にパワフルなヴォーカルを披露し、ステージを支配、オーディエンスを手のひらの上で歌わせる。ファン達は全てのコーラスを一緒に歌い、Babymetalの人気に改めて実感させられた。Babymetalは大歓声の中「See you!!」と共にステージを後にした。因みにBABYMETALのライブでは「The Fox God Crew」と入ったシャツを着た数人のクルー達がライブを撮影していた。いつかこのLA公演での映像が使われる時が来るかもしれない。今回のBABYKLOKツアーは約一ヶ月半の期間に全米を周る過密なスケジュールで行っており、連日の公演と移動で本当に大変であったと思う。約10年程Babymetalは海外に出てツアーをしているが、キツネ様のお告げだとしても慣れない異国の地でのツアー公演は想像を絶するものでBabymetalとクルーにはリスペクトしています。来月にはまた同じ様なスケジュールで欧州圏を周る予定であり、今はしっかりと身体を休めて欲しいと願っています。

 

Babymetal Setlist:

BABYMETAL DEATH
Gimme Chocolate!!
PA PA YA!!
Distortion
BxMxC
Believing
Monochrome
神バンドソロ
METALI!!
Megitsune
Headbangeeeeerrrrr!!!!!
Road of Resistance

この日のラストアーティストは、Adult Swimの人気アニメシリーズMetalocalypseに登場する架空のデスメタルバンドDethklokだ。管理人にとっては二度目となるDethklokのライブであり、バックスクリーンでのアニメーションの分身が映され、ステージパフォーマーはシルエットで演奏するDethklok独自のヴィジュアルライブは体験済みだ。ステージに設置された巨大なスクリーンにオープニングアニメが流れ「Is Dethklok Back?」という問いかけから、悪役であるGeneral CrozierがあほなDethklokファンが増え続けているとして悪態をついており、DethklokマネージャーであるCharles Foster Offdensenが登場すると会場から大歓声が。General Crozierの悪の計画を止める為に皆の力でDethklokを呼び戻す時だとの指令に会場から「Deth-KLOK」コールが響くとフロントマンBrendon Small、ドラムGene Hoglan、ベースPete Griffin、ギタリストNili Broshが次々にステージ登場する。そして、スクリーンにも各メンバー達が蘇りアルバムThe Dethalbum(2007)からの曲Deththemeで演奏がスタート。バンドは、残虐なリフ、獰猛なボーカル、同アニメのダークでユーモラスな精神を完璧にとらえたアニメーションのビジュアルで容赦ない演奏攻撃を繰り広げる。ステージに設置された巨大なスクリーンのおかげで、このバンドに命が吹き込まれている。曲毎に展開にそったアニメーションが映し出されDethklokが演奏する。ステージ上のライトはシャットダウンされており、影に包まれたフロントマンBrendon SmallやドラムGene Hoglan達はぼんやりと見える程度だが、爽快で没入感のある体験を作り出している。曲Briefcase Full Of Gutsはタイトル通り、ビジネスマンがその月にナンバーワンの業績を上げた同僚を刺し自分のブリーフケースに同僚の内臓を詰め込むシーンがあり、曲Birthday DethdayではヴォーカルNathan Explosionの顔の皮膚がはがれた状態が映し出され、曲Murmaiderではあらゆる武器を使い人魚を惨殺していくシーンがある、曲Thunderhorseにはアダルトなシーンからまたまた惨殺シーンがあり、曲Fansongでは絞殺、刺殺等様々な方法で殺される人々のシーンがありライブ中一部の曲だがAdult Swimの18歳以上の視聴者向けであるグロイ、アダルトなアニメシーンがある。Babymetalを見に来た子供や学生にはショッキングな内容の映像であり注意が必要かもしれない。しかし、曲Dethsupportでは心電図のグラフと$543958ドルの医療費請求書に早急に支払いを命じる「URGENT」とあり、高額な治療費の為に生命維持装置をストップせざるを得ない状況を描きアメリカが抱える高額な医療費が支払えない社会問題を提起している。曲Duncan Hills Coffee JingleやI Ejaculate Fireではグロウルと
残虐なリフが最高潮に達し、オーディエンスをモッシュピットに叩きこむ。バンドはオーディエンスの心を揺さぶり、目を楽しませてくれるビジュアルを提供する方法を心得ておりBabymetal同様素晴らしい音楽エンターテインメントを見せてくれた。Brendon Smallは同アニメシリーズの脚本、監督、製作総指揮に加えて、Dethklokの5人のメンバーのうち3人であるスSkwisgaar Skwigelf(g)、Pickles(dr)、Nathan Explosion(vo)のキャラクターの声も提供しているが、パフォーマンス中でのMCは無く、曲間にDethklokのマスコットFacebones(こちらの声もBrendon Smallが担当)がライブで楽しく過ごせるよう「ちゃんとシャワーを浴びて清潔で来いよ」、「マリファナは程々に周りに迷惑をかけるな」を説明するライブを飽きさせない笑えるアニメが進行。もう一つのエンターテイメントな演出と言うと、曲Thunderhorse終了後Brendon Smallが暗いステージの中一人で担当するMetalocalypseの数人のキャラ達を演じ、会話している様に聞こえてくる演出は流石と脱帽。オーディエンスはDethklokライブ中終始熱狂に包まれ、モッシュとヘッドバンギングで一体となっていた。バンドの音楽性は期待通り超一流であり、TestamentやStrapping Young Lad等で活躍したドラムGene Hoglanによるマシンの様な正確無比、安定感抜群の轟音のリズム、そこに心まで揺さぶられるブレイクダウンが会場中に響き渡っていた。ラストソングとなったファンから人気の高い曲Go Into The WaterにはギタリストLaura Christineが参加し一緒に演奏。大歓声の中Dethklokショウが終了。終了と同時にステージのライトが初めて照らされBrendon Smallはメンバーを紹介、オーディエンスに感謝の言葉を述べ、一緒に写真撮影。Brendon Smallは今回Babymetalと一緒にツアーする事を決断した経緯について(3:50)、別の人からBabymetalとのツアーを打診された際はとてもクレイジーな案だと思ったと発言。Brendonは「Babymetalはとても素晴らしいショーを見せてくれ、音楽はクレイジーで破壊力がある。Babymetalがやっている事は自分とは全然違うけど、ライブにおけるクオリティとエンターテイメント性の部分ではどちらも最も力を注いでいる部分であると思っている。だからもしBabymetalとDethklokが一緒にツアーをやったら、皆が見に来れる最も楽しいショーが出来るだろうと思ったのさ」とBabymetaとのツアーを楽しみにしていた事をインタビューで語っています。

Jason Richardson、Babymetal、Dethklokを迎えてYouTube Theaterで行われた公演は、多様な音楽的才能の爽快なライブであり、オーディエンスを畏敬の念で包み込んでいた。特にこの公演において大きな役割を果たしていたのがバックスクリーンに映し出されるカラフルな映像、リアクションを促す演出等がオーディエンスをより興奮させ、惹きつける効果があった。各アーティストはそれぞれの道を切り開き、他の追随を許さない大迫力のパフォーマンスを披露し、あらゆるジャンルのメタルヘッズにダイナミックで忘れられない夜を提供した事だろう。胸が張り裂ける様なニュースに、今後世界はどうなっていくのかと不安になる様な報道が日々続く今、複雑な思いと共に過ごしている多くの人々にとってこのツアーは、日々の不安や様々なネガティブな思考を一時でも忘れさせ、音楽に熱中できる空間を提供する事に成功していた。Jason Richardson、Babymetal、Dethklokの卓越した音楽のパワーハウスとして、またライブパフォーマンスのパワーの証として訪れた人々に深く記憶されることだろう。

 Dethklok Setlist:

Deththeme
Briefcase Full of Guts
Birthday Dethday
Awaken
Bloodlines
Concert Etiquette with Facebones
The Gears
Hatredcopter
Dethsupport
Duncan Hills Coffee Jingle
Concert Tips with Facebones
Aortic Desecration
I Ejaculate Fire
The Duel
Murmaider
Thunderhorse
Fansong
SOS
Go Into the Water

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