バンド、アーティストもステージを降りれば喜怒哀楽のある普通の人、ここではそんな生のアーティストの顔を紹介していくコーナー。
バンド達の違った一面を音楽と一緒に読んで楽しんでください。不定期に掲載していきます。

第1回:Suicide Silence、Mitch Lucker Memory

2012年10月31日、ハロウィンで賑わうアメリカ西海岸にて1人の男の人生の幕が閉じようとしていた。Mitch Lucker、デスコアSuicide Silenceのヴォーカルでありバンドの中で最も影響力のある男だった。その日、自宅で軽く飲んだ彼は奥さんの注意も聞かずに愛車ハーレーに乗り夜の街に出掛ける。それから数時間後彼の乗ったバイクは運転を誤り事故を起こす。単車から投げ出されたMitchは直ぐに近所の住人の通報より救急車で運ばれた。しかし、翌朝11月1日自宅近くの病院にて奥さんJolieさんそして娘Kenadeeちゃんが看取る中息を引取った。まだ28才の若さだった。

 

Suicide Silenceといえば真っ先に飛び込んでくるのが彼の強烈なライブパフォーマンスだろう。ステージに立つ彼の姿は他のアーティストに無いものがあった。デーモンが乗り移ったかの様な彼のパフォーマンスはライブでもアルバムでも観る者、聞く者を虜にした。メタルシーンの中でも彼は特別な存在だった。彼が亡くなって一年が経つ。Suicide Silenceは新たにEddie Hermidaという強力なヴォーカルを後任に新譜のレコーディングを開始している。多くの人はバンドの復活を喜んだ、しかしMitchの死を惜しむ声は今でも多く、彼の存在は未だに多くの人の心の中に焼付いているのだ。

 

今回一周忌と言う事で特別に彼の奥さんJolieさんのインタビューを掲載する事になりました。生前のMitchとの出会い、彼とバンドの成長を共に歩き、彼との間に娘を儲けたJolieさんがMitchとの思い出を雑誌のインタビューにて答えています。Mitchの事を思いながら読んでくれれば幸いです。

 

 

 

 

Revolver誌:どういう経緯でMitchと出会ったんですか?

Jolie Lucker:2002年、私は友人とタトゥショップに行ったの。そこで働いていたのが彼(Mitch)だった。彼は私を見るなり何も言わずに通りすぎたのよ、そして私が他の店員に「今の誰?」と聞いたの。彼は凄く恥ずかしがり屋で、私の事をまともに見ようともしなかったわ。その当時彼には他にガールフレンドが居たのよ、でも初めて彼と出会った日から数ヶ月後に私達はデートするようになったのよ。

 

Revolver誌:彼のどういう所に惹かれたのですか?

Jolie:彼の見ためね。昔から彼は素敵だった。初めてあってからしばらくして彼は私のソーシャルネットワークにメッセージを送ってきたの、「何で女性は皆エロいんだろう」てね。私は彼に「何であなたはつまらない女と付き合っているの?」と返したのよ。そしたら彼は私の所に遊びに来て、それから彼が私と同棲するようになるには時間は掛からなかった。私達は18-19ぐらいだったかな。

 

Revolver誌:当時Mitchはどんな人だったんですか?

Jolie:シャイで、おっちょこちょい、物静かで楽しい人だった。彼はストレートエッジだったの、だからアルコールの代わりにカフェイン飲料を飲んでいてよくクレイジーになっていたわ。彼はふざけて物を壊す癖があったの。彼と彼の友人達と一緒に遊んだ時アパートの外に古いでかいPCモニターが捨ててあったの、彼はそれを見つけるなりモニターを持って駐車してあった車目掛けてモニターを投げつけたのよ。車のバックウィンドウが割れてしまって、私も友人達も「お前なんて事するんだよ」て彼を見ていたわ。彼と友人達はそうやって良くふざけていたわ。

 

Revolver誌:問題児ですね、

Jolie:私達は皆問題児だったわ。皆小さいころからトラブルを起こしていた人でそれが皆集まって遊ぶようになったのよ。一度誰かのホームパーティに皆で行った時にパーティに参加していた女の子が格好つけてJack Daniel's(ウィスキー)をボトルごと持って歩いていたの。Mitchは女の子がボトルを一度手放した時にボトルを持って違う部屋に入ってボトルに小便をいれたのよ。そして何事も無かった様に元の場所に置いて酔っ払った女の子がそのウィスキーを飲むのをみて楽しんでいたわ。

 

Revolver誌:Mitchは自分の家族と仲が良かったんですか?

Jolie:ええ、彼の兄さんは海軍で日本にいるけど良く話していた。そして今年19になる弟とも仲良くしていた。3人の男兄弟で皆父親に育てられたの。Mitchのお父さんが始めてMitchにメタルを教えてMetallicaのライブに連れて行ったの。それからMitchに初めてのギターを買い与えた。お父さんはMitchのナンバー1ファンだったわ。

 

Revolver誌:Suicide Silenceが本格的に活動するようになった時の事を覚えていますか?

Jolie:同じ仲間と遊んでいてそれからジャムセッションをギターのChrisのガレージでするようになったの。あの頃はバンドと呼べるものではなかったけど皆一生懸命練習していた。それからバンドとなって初めてツアーに出る前夜、私達はガレージに寝転がってツアーが出来る喜びを夜通しで語り合った。

 

Revolver誌:バンドの成長を間近に見てどう思っていましたか?

Jolie:最高だったわ。私は彼等の成長そして覚醒も見てきた。バンドメンバー全員大好きよ。彼等は私とMitchにとって大切な仲間なの。彼等の曲も大好きで何時も聴いていたわ。

 

Revolver誌:MitchにとってSuicide Silenceはどんな物だったのでしょう

Jolie:彼の全てだった。メンバーは彼の兄弟で彼はミュージックもメンバーも全てが誇りだった。Alexがどんなに速くドラムをプレイ出来る事、Markの書く最高のギターリフとかもう耳にたこが出来るほど聞かされたわ。そしてツアーが来るのを毎回楽しみにしていた。娘のKenaと私としばらく会えなくなる事は辛かったけどMitchはメンバーと一緒にいる事が大好きだった。彼等は特別な存在だった。

 

Revolver誌:またファンはMitchにとってどんな物だったのでしょう

Jolie:バンド同様ファンの事もMitchは大好きだった。彼はファンから良くプレゼントを貰っていたの。そして彼は毎回それを全て持って帰って来ていた。もう本当に凄い数なのよ、それこそこれは何?みたいな物まであってMitchに「これは本当に持ってるの?」と聞くとMitchは「当たり前じゃないか、ファンがくれたんだぜ」って全て大切に持っていたわ。そして外でSuicide SilenceのTシャツを着ている人を見ると毎回凄く喜んでいた。

 

Revolver誌:現在そのファンから貰ったプレゼントはどうしているんですか?

Jolie:私と娘は最近Mitchと住んでいた家を引っ越したの。やっぱり同じ家に住むと悲しくなってきちゃって。それで彼が大切に保管していた物は全てボックスにしまい今でも保管しているわ。一つだけ、ベネズエラのファンが作ってくれたSuicide Silenceの旗はMitchのお気に入りで今でも私の部屋に飾ってあるわ。

 

Revolver誌:Suicide Silenceを気に入ってくれる先輩バンドもいたと思います。Mitchが一番喜んだ先輩バンドは誰だったのでしょう。

Jolie:KornのJonathan DavisがアルバムThe Black Crownの曲Witness The Addictionにゲスト参加してくれた事はMitchにとって一番思い出深い出来事だった。彼はJonathanが参加してくる事が信じられなかったわ。JonathanがSuicide SilenceのTシャツを着て写真に写っているのを見て彼は「おい見てくれよこれ」って凄い感激して見せてくれた事があるわ。あとSlipknotのメンバーも大好きだった。

 

Revolver誌:あなたの妊娠と共に貴方達に変化はありましたか?

Jolie:私達は22才で人の親となったわ、同時に生きるという事を深く考えるようになったわね。それまで一緒にバカ騒ぎを起こしていた事もあったけど妊娠と同時に二人共成長できたかな。Kenadee Isis Luckerは2007年に産まれたわ。

 

Revolver誌:Kenadeeの名付け親は?

Jolie:実は誰と言う人は居ないの、二人でつけた名前よ。ただミドルネームのIsisは私達の共通の好きなバンドから取らせてもらったわ。

 

Revolver誌:妊娠中にMitchが大人になったと感じた時はどんな時でしたか?

Jolie:妊娠9ヶ月の時二人で夜寝ていた時、彼は寝返りを打って私のおなかに触れたの。その時ちょうどおなかの中の赤ちゃんが蹴ったのよ。赤ちゃんの蹴りを感じて彼は涙を流していたの。多分彼は自分が父親になる事に凄く感動し私に涙を見せまいと反対を向いて泣いていたわ。「俺の子なんだ」ってしきりに言っていた。産まれる時は本当に大変だったわ普段からシャイな彼はガチガチになっていた。私が母親と一緒に洗面所に行くと彼はその場でナーバスになりすぎで卒倒しちゃったの。でも最後はちゃんと私の手を繋いで一緒に赤ちゃんを産んでくれたわ。そしてKenadeeが産まれてからも彼は彼女の為なら何でもやった。本当に最高の父親だった。あの子が夜中に喉が渇いたと来たら、彼女の為に温かいジュースを作ってあげていた。彼女が咳をしたら跳ね起きて彼女の様子を見に行っていたわ。

 

Revolver誌:Mitchのプロポーズはどんなだったのでしょう。

Jolie:彼のプロポーズの言葉はありきたりなものだったわ。彼は突然宝石箱をテーブルに置いたの、私が中を開けてびっくりして「これって私が思っている事?」って聞くと彼は「そうだよ」って。それが彼のプロポーズだった。彼はひざを地面につけてプロポーズするような人ではなかったから私は平気だったしそんな彼でも凄く嬉しかった。結婚式は素晴らしかったわ。私達はKenadeeが結婚式に参加できるぐらいの年齢に成長するまで式をやらなかった。でもおかげで私達の結婚式でKenadeeはお花を巻くという大役を果たす事ができたわ。

 

Revolver誌:Kenadeeは彼の死をどう受け止めてますか?

Jolie:とても辛いはずよ。彼女は解っているわ。あの子はキリスト教関連のプライベートスクールに行っているの。うちはキリスト教ではないし私もMitchも違ったけど娘には良い教育をと(アメリカでは私立の小、中、高の大体がキリスト教の学校)思って入れているの。彼が亡くなった日、私とあの子は学校の先生と面談した。先生が私達を教会に連れて行って下さったのだけど普段から行っていない教会で私は何をしたら良いのか解らなかった、そしてあの日はとても正常に物事を考える余裕も無かったの。親である私がしっかりしなくてはいけなかった、でも私は半分鬱の状態みたいになってしまっていてあの子はそんな私を見てプンプンしていたわ。「お父さんはオートバイ事故で死んだのよ。お母さんはいつまで泣いてるのよ」ってね。とても辛かったわ。彼が生きている時、あの子は彼のツアー生活に慣れていたの。たとえ6-7ヶ月会えなくてもあの子は平気だった。けれど彼が亡くなって始めて6ヶ月が経った時、あの子は改めてもう彼が帰ってこない事を悟ったと思うの。

生前MitchはKenadeeと一緒によく外へ虫取りに出掛けていたわ。蝶、バッタ、カタツムリとかを採ってビンに入れて持って帰って来ていた。あの人が亡くなって数週間後、家の外に出たあの子が「お母さん、外の鉢の中に何か居るよ」って教えてくれたの。二人で鉢を見たら中に蝶が入っていた。その鉢は筒の部分が小さい物で蝶が簡単に入り込める物ではなかったわ。私はあの人だと思ったわ。彼ぐらいしかそういう事をする人は居なかったもの。恐らく彼は何時でもKenaと一緒に居るよって言うメッセージを残したくて蝶の卵を鉢にいれたのよ。

あの子はMitchが星になったと思っているの。彼女は夜空で一番輝いている星を彼だと言っているわ。だから夜二人で外に出て星におやすみなさいって言うの。私達の友人で聴覚障害者の人がいて私達は少しの手話を知っているの。だから夜、二人で空の星にI Love Youって手話でメッセージを送っている。あの子は夜でなくてもたまに空を見上げてはI Love Youのサインを送っているわ。その時は本当に辛いわね。

 

Revolver誌:あなたはさっきKenadeeはMitchと長期間離れて暮らしているのは慣れていたと言いましたが実際彼が亡くなって大変なのでは。

Jolie:ええ、実は私とMitchは去年初めてお互い少し距離を置いて暮らした事があるのよ。でも7ヶ月ぐらいで終わって別に別居でもないのよ。彼はツアーが終了すれば家に帰宅して私達と一緒に生活していた、ただ私達の意見が衝突して、ツアーと家族の生活とのバランスは難しい事にお互い気づいたのね。でも彼が亡くなる2ヶ月前にはお互いを分かり合って喧嘩は終わりになったわ。そしてその2ヶ月間は本当に夫婦として最高の時間だった。喧嘩も、言い争いも無いパーフェクトな家庭だったわ。本当に彼が死ぬ前までこの生活が続けば二人目も作ろうか、と話していたの。そしてあのハロウィンの日もMitchに「ねえ、二人目が出来たらその子にはどんな衣装を着せようか」なんて話していたの。

 

Revolver誌:彼の葬儀は関係者だけで済ませましたがどういった式だったのでしょうか?

Jolie:彼には私達が結婚前夜の晩餐に着ていた正装をして皆に最後の別れをしてもらった。そして彼の箱はグレイ色にして参加者全員にメッセージを書いて貰ったの。彼には彼とKenadeeの写真を持ってもらっていた。本当にその姿を見るのが辛かった。そしてお別れの曲の最初がLuceroのSlow Dancingだったの。それは結婚式で私達の最初のダンスの曲だった。私は泣き崩れてしまった。それからSuicide Silenceの曲を流したわ。彼が亡くなる前、バンドのライブでのイントロ曲はMarch To The Black Crownだった、彼の棺が出される時もその曲だった。最後まで彼らしい逝き方だった。本当に最高の人だった。そして悲劇よ、ハートがズタズタになってしまった。

生前、Mitchの最も印象的なステージパフォーマンスがこのスタンプ(踏みつけ)でした。見ていて本当に気持ちい。

 

We miss you Mitch.  RIP

この記事を読んでもっとMitchの事、そしてSuicide Silenceの事を知りたくなった人もいるはず。

 

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