System Of A Downが新曲の制作経緯そして今後について語る。
November 6, 2020
System Of A Downが電撃的なサプライズで発表した新曲について制作経緯、新曲に込められたメンバー達の思い、そしてバンドの今後について語りました。
System Of A Down(以下SOAD)は2005年のアルバムHypnotize以来15年振りとなる新曲Protect The Land、そして曲Genocidal Humanoidzをリリース。
Protect The Land: https://youtu.be/XqmknZNg1yw
Genocidal Humanoidz: https://youtu.be/_74nVpLVn9Q
バンドは2016年頃に新譜を制作している事を発表しファンを歓喜させましたが2018年に入り新譜の制作を停止した事を発表。以降メンバー達はそれぞれの音楽活動やビジネスを行い、メディア上にてSOADの新譜はメンバー間のエゴやお互いの主張が激しい事で人間関係やビジネス的な関係にも影響を及ぼしており、お互いをリスペクトしているも、同じ方向を向いて新しい曲を作る事が困難だった事を停止の理由として語っていました。
こちら過去に投稿したSOAD関連の記事です。
System Of A DownのドラマーJohnが今後バンドが新譜を作る事は無いだろうと発言。
System Of A DownのShavoが新譜について自身の思いを激白。
しかし、9月27日SOADメンバー達の家族の故郷であるアルメニアの東部にあるアルツァフ(ナゴルノ・カラバフ共和国)が隣国であり古くから衝突が絶えないアゼルバイジャンとトルコの連合軍(シリアのISIS等)により攻撃を受けた事で事態は一転。この1ヶ月間、アルツァフ民間人は、昼夜を問わず、ロケット攻撃、落下する爆弾、ミサイル、無人機、テロ攻撃の恐ろしい光景を目にし、彼らはその場しのぎのシェルターに避難し、通りや家、病院、礼拝所などに降り注ぐ違法なクラスター爆弾の放射性降下物を避けようと必死に生きている現状に世界中で侵略を非難し停戦を求めるデモが起きています。アゼルバイジャンとトルコの連合軍は森林や絶滅の危機に瀕した野生生物に火をつけ、また拘束されたアルメニア人が処刑さる映像も投稿され世界中で非難されています。10月10日に一度目、18日に二度目、そして26日に三度目の停戦で合意したもの、合意後の現在も戦闘は続いています。
SOADメンバー達はアルツァフやアルメニアという文化的故郷で起きている深刻な戦争についての関心を高めるために新曲を制作。今回Rolling Stone誌が行ったインタビューにてメンバー達が新曲の制作について、自身の思い、そして今後について以下に語りました。
バンドは近年自身の家族の故郷であるアルメニアとアゼルバイジャンの緊張が徐々に高まってきている事を懸念していたとし、過去の衝突の仲裁に当たったロシア、フランス、米国等が現在コロナウイルスの感染拡大、そして米大統領選挙への対応に忙殺されているタイミングを見ての計画的な侵略行為だとメンバー達は語る。米大統領選においては、バンドのフロントマンSerj TankianはJoe Biden候補の民主党を支持、しかしドラムJohn Dolmayan(Serjの義弟関係でもある)はトランプ大統領を支持しお互いそれぞれのポリティカルな意見を近年発言しメディア上にて衝突しており、メンバー関係は最悪とまで言われていました。
John:支持しているトランプ大統領には、「是非ともこの紛争について関心を高めつつも、この国のアゼルバイジャンとトルコの侵略を非難するという立ち位置をより強固にしてほしい。」
ベーシストShavo Odadjian:「こんな非人道的行為はないだろ、”この地域から出て行ってくれるか?出ていくなら支援するよ?” というスタンスではないんだ、無慈悲な虐殺や破壊行為を知り俺達メンバーは居ても立っても居られない状態だった。」
ギタリスト兼ヴォーカルDaron Malakian:「俺はアルツァフに何度か訪れた事があったが本当に自然に囲まれた美しい土地なんだ。そこに何年も家族代々で住んでいる人々も素敵な人達でその美しい街や人々が蹂躙されて人々があの土地から避難している現状を見るのが辛いよ。彼等は何度もこういった紛争に巻き込まれ強い意思を持った人達だが、それでも最悪な出来事さ。」と語る。
10月、ナゴルノ・カラバフ紛争のニュースを見ていたJohnはアルメニアの人々の事やこれまで繰り返されてきた歴史を思い、居ても立っても居られなくバンドメンバー達にメールをした。「俺は他の3人にメールを送り、これまでの意見の相違は置いて、俺達は今アルメニアの為にスタジオに行って曲を作り、世界中の人々の関心を高める事が必要なんじゃないか、と送るとメンバー達から賛成意見を受けた事が始まりだったんだ。」Shavoもまたニュースを見て焦りを覚えておりJohnがメールを出さなかったら自身がメンバー達に連絡していたと語る。Serjは「俺はアーティストとしてでなく、またSOADの為でもなく、アルメニアの人々の為に新曲を作る事を決めたんだ。自身のクリエイティブな部分によるものでもなく、ビジネスでもない、これはアルツァフの為に声をあげサポートする慈善行為としてやった事だ。」Daronも、「俺達が声を上げなければいけなかった。他のアルメニア人ロッカーで声を上げる人は居なかった。そして影響力を持ったアルメニア人は少なく、俺達の出番だと思ったのさ。」と説明。
Johnのメールのやり取りからDaronは自身のバンドScars On Broadwayの次の作品用に取っておいた曲Protect The Landを直ぐにSOADに提供。他のメンバー達も同曲が自分達の目指しているメッセージに当てはまると直ぐにレコーディングする事が決まる。Daronは同曲について、一年半前に書いた曲でアルバムDictator(2018)に収録されている曲Livesでもアルツァフの紛争について書いており、アルツァフで紛争によって負傷している人々へのサポート基金を募るために曲Livesを作り、その延長線上という事で書いたのが曲Protect The Landだったと語る。
Johnのメールから一週間で曲は完成。Shavoは映像監督として、同曲のプロモビデオも同時期に制作。違った世代のアルメニア人の人々を集め、SOADの新曲という事は隠して、アルメニア人虐殺以降の人々を描いたドキュメンタリー作品と説明し撮影。「映像には赤ちゃん、そして俺の二人の息子、LAに居る教会の司祭、医者、タクシー運転手、軍人等を集めた。そしてアルメニアとアルツァフ現地の紛争を捉えた映像も組み込んだ。俺達は何マイルも離れているが、アルメニア人として一緒に闘う姿勢である事を強調した映像作品になった」と説明。またSOADメンバー達のショットは曲Toxicityと同じ様になっている事も説明。」
曲Protect The Landを聴いたマネージャーは即OKを出したがバンドにもう一曲ヘビーな新曲を要求。数年前Daron、John、Shavoで制作したものSerjからの理解が得られなかった事でお蔵入りにした新曲候補であったGenocidal Humanoidzを出す事で合意。Daronは曲Protect The Landとマッチする曲であり「数年前の制作時ではテロリスト達は侵攻を辞めないといったメッセージだったのを、テロに対し俺達は闘いを辞めないというメッセージに変える事にしたんだ。」と説明。
SOADメンバー達は長く一緒にスタジオでレコーディングしていなかったもの、新曲のレコーディングは非常にスムーズに行った事を説明。Johnが初めてメールしてからメンバー一丸となって新曲を作り始め、Serjは住んでいるニュージーランドから即LAに帰国しスタジオに行ってメンバー達と合流し一週間で完成したそうです。Shavoは制作について、「この新曲を制作する事はバンドにとって大きな意味があったんだ。メンバー達は全ての意見や思想を一旦おいて、”俺達は今こそ一緒に曲を作り発表する時だ、俺達が15年振りに新曲を発表したら人々はきっと聴いてくれ、この紛争についてもっと関心を寄せてくれる” 俺達全員そう思っていたのさ。」と説明。Serjも「アゼルバイジャンとトルコの腐敗した政権は、これらの土地を自分たちのものとして主張したいだけでなく、その使命を達成するために虐殺行為を行っている。俺達はこれらの不正な独裁行為を非難するだけでなく、世界の指導者たちが地域に平和をもたらし、独立国家としてのアルツァフを正当に認めるために、各国政府に働きかける必要がある」と説明。
バンドは「新曲を発表し皆には新曲の起源についてもっと詳しく知ってもらい、そして今起きている深刻な不正義と人権への侵害について発言する機会が生まれれば幸いだ。アルツァフの人々を支援するために、少額であっても多額であっても寄付をしてくれることを心からお願いしたい。現在アルツァフの人々はシェルターに避難しており同地域やアルメニアではコロナウイルスの感染が拡大している。この新曲はこの恐ろしい行為によって被害を受けた人々のために、非常に重要で切実に必要とされている援助と基本的な物資を提供するために使用される。」と発表。
新曲を発表した事で今後についてJohnは、「自分だったらバンドは三年間隔で新譜を発表出来ているよ。でも俺一人のバンドではない。この数年俺は何度もバンドに対して新譜を制作しようと言ってきた、けれど結果が全てだよ。俺達は5枚のアルバムと二曲が追加された。俺達はこれまで多くの実績を作って来た、もしこれで終わるならそれでも良いとも思っている。」と語る。Serjは秋に発売予定していた新EP作品Elasticityの延期を決めた事を発表。Serjは「この紛争が終わらない限り今後はSOADや他の音楽活動も頭に入ってこないよ。今はこの紛争を一日でも早く終結する様に協議してもらう事を願っている。」と語る。Shavoは「今回バンドが新曲を発表出来てメンバー達を誇りに思っているよ。出来れば彼等ともっと制作したい気持ちだ、もしかしたら今回の件で結束力が高まるかもしれない、しかしでないかもしれない。でも俺はいつだってポジティブに考えているよ。」と発言。Daronは「俺は無理という答えはないと思っている。今回の新曲の制作は俺にとっても予期出来なかった事であり、俺はScars On Broadwayの新譜に取り組む予定だった。だから誰にも分からないと思うよ。もしSOADが今後も何もなければ俺はこれまで通り自身の音楽活動を続けて行くよ。でも今回皆で集まって制作できた事は本当に良かったと思っている。皆がそれぞれの意見を置いて、一つの目標に向かって活動出来た事は素晴らしい。俺は軍人でないけど、この紛争に音楽によって少しは影響出来るかなと願っているんだ。」と語っています。
こちらRolling Stone誌の記事:https://www.rollingstone.com/music/music-features/system-of-a-down-new-songs-protect-the-land-genocidal-humanoidz-1085942/
バンドは、「新曲をダウンロードする機会をまず慈善行為と考えてほしい。もしあなたにその能力があり、より寛大な寄付ができるならば、SOADメンバー全員があなたの行為にさらに感謝する。この収益は全てアルメニア基金に寄付される。アルツァフとアルメニアで生活を必要とする人々に物資を届ける慈善団体なんだ。」と説明。
こちらから新曲の購入が出来るBandCampです: https://systemofadown.bandcamp.com/